日本は地震大国として知られ、体に感じる程度の地震だけでも年間数千回発生しています。
実際に、全国的に見ると、数年おきに大きな地震が発生しており、その発生時間や場所を予測することは困難です。しかし、だからといって対策を諦めるわけにはいきません。
あらかじめ地震対策をしておくことで、安全な避難や二次災害の防止につながる可能性を高めることができます。
特にオフィスは多くの人が長時間過ごす場所であるため、適切な地震対策が重要となります。 このコラムでは、オフィスにおける地震対策の重要性と具体的な対策について解説していきます。

オフィスでの地震対策の重要性

オフィスでの地震対策は、従業員の安全と事業の継続性を確保するために非常に重要です。以下にその重要性をわかりやすく4つにまとめました。

従業員の安全確保

勤務時間中に地震が起こった場合、企業は従業員の安全を確保する義務が生じます。発生の阻止と予測ができない中、人的被害を避けるために地震に備えたオフィスづくりや日頃の対策が非常に重要になってきます。
オフィス家具やOA機器の固定、避難経路の確保、定期的な防災訓練による避難経路の確認を行っておきましょう。

事業継続性の確保

自社の資産の損失を最小限に抑えるために、オフィスに地震対策を実施する必要があります。会社としての機能をいち早く復旧し通常通りにサービスを再開することは、企業の利益だけではなく有事の際の社会の安定にも繋がります。
データのバックアップや設備の耐震化などの対策が必要です。

二次災害の防止

地震発生時は、直接的な被害だけでなく、それに伴う二次災害にも注意が必要です。オフィスでは、日頃からの備えと、的確な行動を心がけましょう。
必ず転倒する可能性があるオフィス家具は固定しておいたり、万が一のことを考え避難経路になる通路付近には設置しないことも重要です。

法的・社会的責任の遂行

多くの地域では、地震対策に関する法律やガイドラインが定められています。これらを遵守することは法的に安全な職場作りにつながります。
また、企業は社会の一員として、地域社会の安全と復旧に貢献する責任があります。地震対策を通じて、企業の社会的責任を果たすことも大切です。

オフィスで出来る地震対策

1日の内の多くの時間を過ごすオフィス。いつ発生するかわからない地震に対してあらかじめ対策を講じておくことが大切です。ここではオフィスで出来る地震対策を紹介していきます。

オフィス家具への地震対策

キャビネットやローパーティションなど高さのあるオフィス家具は、必ず固定をして地震対策を行なうことが大切です。

地震時に一番よく見られるケースはキャビネットやパーティションなどのオフィス什器の転倒や書類ファイルや備品、電子機器類の落下です。オフィスは家庭とは異なり大型の棚や機器類が多数存在します。地震の揺れで転倒すると、重量がある分簡単に移動させることが難しく、避難経路の障害となったり、身の危険に繋がることも考えられます。書類や備品などの小物も同様、落下による怪我や散乱による避難への妨げになりえますので、事前の防止策を講じておきましょう。

備蓄品の準備とスペースの確保

災害発生時のさまざまなリスクを考えると、オフィスでも備蓄品を準備しておくことが重要です。具体的に必要な備蓄品は下記の通りです。

・飲料水
・非常食
・応急手当用品
・衛生用品
・防寒・保温用品
・懐中電灯と電池
など

このなかでも、飲料水であれば1人あたり1日3リットルを目安に、少なくとも3日分の水を備蓄することが推奨されており、非常食についても3日から1週間程度の備えをしておくことが良いでしょう。

また、備蓄品を保管しておくスペースもオフィス内には必要です。
緊急時にすぐに取り出せるよう、アクセスしやすい場所や食品や医薬品の劣化を防ぐため、温度や湿度が安定している場所を選びましょう。


【備蓄品の保管方法の例】
・デッドスペースの活用
・保管スペースの確保
・個人のデスク周りはロッカー

大規模なオフィスであれば保管専用のスペースを確保することも容易ですが、小規模オフィスの場合は、デッドスペースを有効に利用するなど工夫をすることが大切です。

地震対策を考えたレイアウト

オフィスの地震対策を考える上で、レイアウトは非常に重要なポイントです。 避難経路を確保するため、通路や出入口となる部分には障害物を配置しないことが大切です。キャビネットなどのオフィス家具が転倒して出入口を塞ぐ危険性も考慮し、転倒防止対策と併せて適切な配置を検討しましょう。 また、備蓄品は緊急時にこそ取り出しが必要なので、普段利用しないからといって取り出しにくい場所に置かないよう、レイアウトを慎重に考える必要があります。

具体的な地震対策について

ここでは具体的にどのような地震対策をオフィスで行なえばよいのか、ポイントを解説します。
特に、オフィスでは家具の転倒が考えられるため固定方法を中心に記載しています。

オフィス家具の固定

大型で重量のあるオフィス家具が転倒するとかなりの危険がともないます。そのような事態にならないように必ず固定をするようにしましょう。
固定方法には「床固定」「壁固定」「連結固定」の3種類があります。

「床固定」

3つの中で一番効果的な固定法は床固定です。ただし注意点として、この場合の床固定というのはコンクリートスラブに直接アンカーボルト固定することを指します。オフィスでは配線の便宜上よくOAフロア(フリーアクセスフロア・二重床)を採用していますが、構造上躯体と一体化していないため、床上げされたOAフロア部分にのみ固定すると、固定力が低く安全性が保証できない場合があります。したがって、OAフロアの場合は必要に応じてスペース埋め用の充填材を介してコンクリートスラブに固定することが推奨されます。

「壁固定」

多くの場合、固定に使用する壁は躯体のコンクリート壁ではなく、間仕切り用のLGS壁(軽量鉄骨+ボード)やアルミやスチールのパーティションになります。間仕切り壁は天井部分が構造体と直接結合していないケースがほとんどのため、激しい揺れに耐えきれず、天井ごと崩壊し転倒する可能性もゼロではありません。したがって、コンクリート壁以外への壁固定は、あくまで床固定の補助措置だと認識した方が望ましいでしょう。

「連結固定」

連結固定は文字通りオフィス家具同士やオフィス家具と機器類の連結を指しています。上下、左右、背面、天板など様々な連結方法がありますが、なるべく一箇所ではなく、可能な限り隣接している什器をすべて連結して一体化することで防倒性を高めます。特に背の高い上下分離型のキャビネットなどは、必ず連結した方が望ましいです。

落下や破損防止

地震時に物が落下するケースは、以下のような状況で多く発生します。

・棚や収納キャビネットの上など、落下防止措置が施されていない高い場所に直接物を置いている場合
・キャビネット扉のガラスが割れて物が飛び出す場合
・ラッチやセーフティロック機能の付いていない引き出しが揺れによって開く場合

対策として、まずはなるべく重量のある物を高い場所に置かないことが重要です。これにより、重い物の落下による怪我を防ぐと同時に、収納什器の重心を下げることで転倒防止にも繋がります。また、什器の扉と引き出しは、勝手に開かないようにラッチ機能やセーフティロック機能が付いているものを選びましょう。さらに、ガラス面のある収納什器は、転倒しても割れないように飛散防止フィルムを貼るか、最初から強化ガラス付きの什器を選択することをおすすめします。

躯体部分のガラスや天井なども、破損・落下する可能性の高いものとして考えられます。上記対策同様、飛散防止仕様のものを選んだり、フィルムを貼付したり、より耐震力のある新しいシステム天井に付け替えたりすることも有効な措置です。ただし、賃貸の場合はビル側か管理会社の管轄になりますので、躯体と関わるものを変更する際は必ず関連部署に連絡してください。

まとめ

オフィスでの地震対策は、従業員の安全と事業の継続性において極めて重要です。企業は従業員の安全を守り、ビジネスを早期に復旧させることが求められています。オフィス内での地震対策には、オフィス家具や設備の耐震化、備蓄品の確保と管理、そして緊急時に備えたレイアウトの検討が必要です。また、地震による二次災害を防ぐため、オフィス家具の転倒防止や落下物による被害を最小化する対策を講じることも大切です。さらに、法的および社会的責任を果たし、地域社会の安全に貢献するためにも、地震対策の継続的な見直しと改善を行いましょう。

ミライズワークスでは、オフィスづくりの際の地震対策はもちろんのこと、現在のオフィスの地震対策のご相談もお受けしております。お気軽にご相談ください。